このページの要点
- 無料の体験は、回数、本契約との関係、無断キャンセル後の再申込みの扱いを書く。違約金は消費者契約法9条1項1号の平均的な損害を超えないようにする。
- 有料の体験は、体験料を本契約に充てるかを決め、条件を広告・画面に同じ場所で示す。条件を離して示すと有利誤認(景品表示法5条2号)の問題になる。
- 紹介キャンペーン・継続特典は、内容、対象者、条件、期間、提供の時期、終了の告知まで書く。景品類にあたるかは告示と運用基準で確認が必要。
- 対面の費用は、実費と報酬を分け、費目ごとの基準、事前の見積りと承諾、上限、キャンセル時の扱いを書く。フィードバックの送付も守れる内容で約束する。
結論:付帯条件は「内容・期間・変更の手続」を書く。「別に定める」だけにしない
コーチング・カウンセリングの契約書は、料金、回数、期間、解約といった本体の条件には時間をかけて作られる一方、周辺の条件は「提供者が別に定める」の一文で済まされがちです。無料や有料の体験セッション、紹介キャンペーン、継続の特典、対面で実施するときの出張費・交通費・会議室費、セッション後のフィードバックの送付。どれも、受講者からは契約の一部に見える条件ですが、内容が書かれていないために、あとから食い違いが生じます。
「別に定める」とだけ書く条項には、次の三つの問題があります。
- 受講者に内容が分からない。契約を結ぶかどうかの判断材料に、肝心の付帯条件が入っていない。
- 提供者が一方的に内容を変えられる。約束した特典が、後から別の内容に置き換わっても、契約書の上では争えない。
- 費用の負担が後から出てくる。聞いていない費用を請求された、という苦情の典型になる。
消費者契約法は、事業者に、契約の条項を、解釈に疑義が生じない明確なもので、消費者にとって平易なものにするよう配慮する努力義務を課しています(3条1項1号)。また、民法の規定より消費者の権利を制限し、義務を加重する条項で、民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効です(10条)。提供者が別に定める内容を一方的に決めてよい、という書き方は、この観点から点検される対象になります。
付帯条件ごとに、書いておくこと(一般的な整理)
| 付帯条件 | 書いておくこと | 書かないと起きること |
|---|---|---|
| 体験セッション | 無料か有料か、回数、所要時間、キャンセルの扱い、本契約に進むときの取扱い | 体験の回数や料金で食い違う。体験料が本契約に充てられるのかをめぐって争う |
| 紹介キャンペーン・継続特典 | 内容、対象者、条件、期間、提供の時期と方法、変更・終了の手続 | 約束した特典がもらえないと言われる。特典の条件が後から変わる |
| 出張費・交通費・会議室費等 | 費目、算定の基準、事前の見積りと承諾、上限、キャンセル時の扱い | 聞いていない費用を請求されたと言われる |
| フィードバックの送付 | 送付の方法、時期の目安、内容、届かなかったときの扱い | 送られてこない、届いていない、という行き違いが起きる |
回数や期間への体験の算入は回数と契約期間のページ、継続コースの更新は月額・自動更新のページで扱います。このページでは、これらの周辺の条件を、条文に落とし込む書き方に絞ります。
無料の体験セッション:回数の制限・再申込み・無断キャンセル
無料の体験セッションは、受講者にとっては本契約を決める判断材料、提供者にとっては新しい受講者と出会う機会です。無料であっても、提供者の時間と枠を使うため、条件を決めておく必要があります。
- 回数の制限。体験は同じ人につき原則として1回までとする、と書く。同じ人が複数回申し込んでいないかを確認するために、氏名や連絡先を利用することを、個人情報の利用目的に入れておく(個人情報保護法21条2項は、契約書などの書面に記載された本人の情報を取得する場合に、あらかじめ利用目的を明示することを求めています)。
- 再申込みの拒否。誰と契約するか、誰に体験を提供するかは、提供者が決められます。ただし、拒否する場合の基準(たとえば、無断でキャンセルした場合)を、申込みの前に示しておく。
- 無断キャンセルの扱い。無料の体験で、キャンセルの違約金や実費を請求すると、解除に伴う損害賠償の額の予定または違約金として、平均的な損害の額を超える部分が無効になるおそれがあります(消費者契約法9条1項1号)。無料の体験では、再申込みをお断りする、という扱いが現実的です。
- 体験の内容の範囲。本契約と同じ質で行うのか、概要を伝える内容にとどめるのか。体験で提供する助言が、後から本契約の履行の一部として主張されないよう、体験の位置づけを書いておく。
体験の後の勧誘の仕方にも注意が必要です。体験の最後に、帰りたい旨を示した受講者を帰さない、他の人に相談するための連絡を威迫する言動を交えて妨げる、といった言動は、困惑による取消しの原因になります(消費者契約法4条3項2号・4号)。その場での契約を強く勧めること自体は同項の類型に当たらなくても、後から苦情の入口になりやすい点は変わりません。また、契約の申込みの前に提供者が行った事業活動について、消費者の特別の求めに応じたものでないのに、「あなたのために特別に実施した」と告げて損失の補償を請求することも、取消しの対象になります(同項10号)。無料の体験を、後から費用として請求する根拠にしないことが重要です。決断を急がせない運用は人生の決断に関わるセッションのページでも扱っています。
書き方の例(一般的な例) 無料の体験セッションの書き方
体験の位置づけ
理由「提供者の裁量」とだけ書くと、受講者から見て条件が分からない。回数、時間、本契約との関係、キャンセルの扱いを書くと、双方が同じ前提で臨める
有料の体験セッション:返金と、本契約に進むときの扱い
体験を有料にする場合は、無料のときにはなかった論点が加わります。体験の料金をどう扱うかです。型ごとに整理します。
体験の型と、決めること
| 体験の型 | 決めること | 注意すること |
|---|---|---|
| 無料の体験 | 回数、所要時間、再申込みの扱い | 無断キャンセルに違約金を課さない。体験の後の勧誘の仕方に注意する |
| 有料の体験(本契約で料金を充てる) | 体験料の額、本契約に進める期限、充てる金額、充てる条件 | 充てる条件を、広告と申込みの画面に明記する。条件を小さく示すと、有利誤認の問題になり得る |
| 有料の体験(充てない) | 体験の対価として何が含まれるか(セッション、フィードバック、資料) | 本契約に進んでも差し引かないことを、申込みの前に示す |
有料の体験でキャンセルがあった場合は、次のように整理します。実施日の前までのキャンセルは、返金または日程の変更を認める。実施日の直前のキャンセルや無断欠席は、提供者が枠を確保したことで生じる損害の範囲で、返金しない、または一部を返金する。ここでも、解除に伴う違約金等は、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になる点(消費者契約法9条1項1号)に注意します。「提供者の裁量により、全額または一部を返金しないことがある」とだけ書く条項は、返金の基準が受講者に分からず、また、提供者に責任のある未実施にまで及ぶ読み方ができるため、避けます。
体験から本契約までの流れ(一般的な例)
- 体験の申込み体験の内容、料金、キャンセルの扱い、本契約に進むときの扱いを、申込みの画面で示す
- 体験の実施約束した時間と内容で実施し、本契約の勧誘とは別の場面として扱う
- 結果の共有体験でわかったことの要約と、本契約の内容(回数、期間、料金)の案を、書面で送る
- 考える時間体験の後、受講者が持ち帰って検討できる期間を置く
- 本契約の申込み体験料を充てる場合は、充てる金額と条件を示したうえで、受講者の側から申し込む
体験を本契約に含めるかどうかは、「全○回」の数え方に直結します。含める場合は、体験の日を起算日とするのか、本契約の成立日を起算日とするのかも、あわせて決めます。
紹介キャンペーンと継続特典:書くことと、景品表示法
紹介キャンペーンは、受講者に新しい受講者を紹介してもらい、紹介した人または紹介された人に特典を提供する仕組みです。継続特典は、契約を続けた受講者に、追加のセッションや値引きなどを提供する仕組みです。
この二つの条項の典型は、「キャンペーンの実施の有無、内容、対象者、特典の内容および提供方法は、提供者が別に定める」と書くものです。契約の本体と同じ契約書の中に書かれていながら、中身が何もない条項になっています。特典は、提供者にとっても受講者にとっても、約束として意味を持ちます。次の項目を書いておくと、約束の中身が確定します。
- 内容。何が提供されるか(値引き、追加のセッション、金銭、物品など)。
- 対象者。紹介した人が対象か、紹介された人が対象か、両方か。
- 条件。紹介された人が本契約を結ぶこと、一定の期間継続すること、紹介した人と紹介された人が別人であること。紹介された人が途中で解約・返金を受けた場合の取扱い。
- 期間。キャンペーンの実施期間。実施期間中の約束は、期間中に変更しない。
- 提供の時期と方法。いつ、どのように特典を受け取れるか。
- 上限。一人あたりの特典の回数や総額に上限があるか。
- 変更・終了の手続。実施を終了するときの告知の方法。終了後に新しいキャンペーンを始める場合の取扱い。
- 不正の扱い。同一人物による自作自演など、不正があった場合の取扱い。
景品表示法の観点も押さえておきます。同法は「景品類」を、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品または役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するものと定義しています(2条3項)。そして、内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額や総額、種類、提供の方法その他の事項を制限し、または禁止できます(4条)。紹介の特典や継続の特典が、この景品類にあたるか、あたる場合にどのような制限があるかは、内閣総理大臣の指定する告示とその運用基準で確認が必要です。
また、取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示で、不当に顧客を誘引するおそれがあるものは、禁止されています(5条2号)。「紹介すれば誰でも無料になる」と大きく示しながら、条件が小さな字で別の場所にある、といった表示には注意が必要です。特典の内容と条件は、特典を示す場所と同じ場所に書くのが基本です。
紹介の仕方も、個人情報の観点から整えます。紹介する人が友人の氏名や連絡先を提供者に伝える形は避け、友人本人が自分で申込みフォームから申し込む形にします。個人情報の取得は偽りその他不正の手段によってはならず(個人情報保護法20条1項)、取得した場合は利用目的を通知または公表する必要があります(21条1項)。本人が自分で申し込む形にしておけば、これらの問題が生じにくくなります。
書き方の例(一般的な例) 紹介キャンペーン・継続特典の書き方
紹介キャンペーン
理由実施の有無から内容まで「別に定める」では、約束の中身がない。内容、条件、提供の時期、終了の告知を書くと、特典が約束として確定する
継続特典
理由継続特典は、継続を決める材料になる。内容を示す時期を、再契約の申込みの前にしておくと、決断の根拠が整う
書き方の例第○条(紹介キャンペーン)
- 提供者は、○年○月○日から○年○月○日までの期間、紹介キャンペーンを実施する。
- 受講者が紹介した方(以下「被紹介者」という。)が、受講者の紹介である旨を申込みの際に申告して、本サービスの契約を結んだときは、提供者は、受講者に対し、○○を提供する。被紹介者は、受講者と別の個人でなければならない。
- 特典は、被紹介者の入金を確認した日から○日以内に、提供者が指定する方法で提供する。
- 被紹介者が特典の提供前に契約を解除し、または返金を受けたときは、特典は提供しない。特典の提供後であったときは、提供者は、特典に相当する額を請求できる。
- 提供者は、前項のほか、不正な方法によって特典を得ようとした場合は、特典を提供しない。
- 提供者は、キャンペーンを終了するときは、終了の日の○日前までに、ウェブサイトまたは通知により告知する。終了の日までに成立した契約には、本条を引き続き適用する。
第4項の請求は、提供済みの特典の価値を請求する形になるため、請求の額が過大にならないか、解約に伴う違約金に当たらないかを、運用の実際に照らして確認します。
対面の実施にかかる費用:出張費・交通費・会議室費・宿泊費
オンラインで行うセッションが中心でも、対面での実施を認める場合があります。そのとき、出張費、交通費、会議室費、宿泊費の扱いが問題になります。
民法には、委任事務を処理するのに費用を要するときは、委任者は受任者の請求により前払をしなければならず(649条)、受任者が必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対して償還を請求できる(650条1項)、という定めがあります。準委任にもこれらの定めが準用されるため(656条)、実費を受講者の負担とすること自体は、法律の考え方に沿っています。ただし、これは、費用の内容と額が受講者に見えていることを前提とした考え方で、契約書の上では、次のように書きます。
対面の費用の書き方
| 費目 | 書くこと | 争いになりやすい点 |
|---|---|---|
| 出張費 | 提供者の移動に対する対価か、実費か。算定の基準を、受講者が見られる形で示す | 「提供者が別に指定する基準」とだけ書かれ、金額が後から出てくる |
| 交通費 | 実費精算か、定額か。経路や交通手段の指定の有無 | 高い交通手段を使ったとして、費用が膨らむ |
| 会議室費 | 提供者が場所を指定するときの実費。受講者が手配するときは費用の負担者 | 提供者が指定した場所の費用が、受講者の想定外に高い |
| 宿泊費 | 宿泊が必要になる条件、上限、事前の承諾 | 宿泊が必要かどうかの判断をめぐって争う |
書き方の要点は、次のとおりです。
- 事前の見積りと承諾。費用が生じる見込みのときは、実施の前に、見込みの額を示し、受講者が承諾した場合に限って負担する。
- 上限。一回の実施につき、見込みが一定の額を超える場合は、提供者が事前に確認する。
- 報酬と実費の区別。提供者の移動時間に対する対価を含む「出張費」と、実際に支出した交通費・会議室費は、性質が違う。別々に書く。
- 精算の方法。領収書の提示、精算の時期、前払の有無。
- キャンセル時の扱い。受講者の都合による日程の変更やキャンセルで、すでに発生した実費は受講者の負担とするが、提供者は取り消せる費用の負担を避けるよう努める。実費を超える費用を課すと、解除に伴う違約金として、平均的な損害を超える部分が無効になる(消費者契約法9条1項1号)。
- 税込・税別の明記。金額を書くときは、税込か税別かを明記する。
書き方の例(一般的な例) 対面の費用の書き方
費用の基準
理由「別に指定する基準」では、受講者は金額を予測できない。実費と報酬を分け、事前の承諾と上限を書くと、費用の予測が立つ
対面の費用を決める前の問い
問い対面を認めるのは、どのような場合か
理由例外的に認める場合と、常に認める場合とで、費用の定め方が変わるため
問い費用の負担者を、誰が手配するかで分けているか
理由提供者が手配する費用と、受講者が手配する費用を混ぜると、請求の根拠が不明確になるため
問い見込みの額を、実施の前に示せるか
理由事前の見積りと承諾がなければ、実費の請求が争いになりやすいため
問いキャンセルしたとき、すでに発生した費用は何か
理由取り消せる費用まで受講者に負担させると、評価が厳しくなるため
セッション後のフィードバックの送付
コーチングやカウンセリングでは、セッションの後に、要約や次回までの課題をメールやメッセージで送ることがよくあります。これは、受任者が委任事務の処理の状況を報告する義務(民法645条)にも沿う実務です。民法は、受任者は、委任者の請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は遅滞なくその経過と結果を報告しなければならない、と定めています。
契約書に書いておく事項は、次のとおりです。
- 送付の方法。電子メール、メッセージ、専用の画面のうち、どれで送るか。受講者の連絡先に変更があったときの届出。
- 送付の時期の目安。各回の実施から何日以内に送るか。目安であることを明記する。
- 内容。セッションの要約、決めたこと、次回までの課題。助言そのものではなく、セッションの記録の要約であること。
- 体験でも送るか。送る場合は、体験のときの内容と、本契約のときの内容が同じかどうか。
- 届かなかったとき。受講者が受信できなかった場合に、再送を求められること。
フィードバックを受講者が保存する責任を負う、と書く条項については、評価が分かれます。受講者が自分で保存しなかった場合に、提供者が再送の義務を負わない、とする書き方の評価は記録・メッセージ・音声のページで扱います。また、フィードバックの内容は、扱わない事項に及ばないよう、助言の断定を避けた書き方にします。この点は人生の決断に関わるセッションのページも参照してください。
書き方の例第○条(フィードバックの送付)
- 提供者は、各回のセッションの後、○日以内を目安として、セッションの要約、決めたことおよび次回までの課題を、受講者が指定した連絡手段で送付する。体験セッションについても同様とする。
- 受講者は、連絡先に変更があったときは、速やかに提供者に届け出る。
- 送付したフィードバックを受講者が受け取れなかったときは、受講者は、提供者に再送を求めることができる。提供者は、記録が残っている範囲で、これに応じる。
- フィードバックは、セッションの内容の要約であり、法律、税務、医療その他第○条に定める事項についての判断を示すものではない。
第4項は、扱わない事項の条文と対応させるための確認です。数字の箇所は、運用に合わせて決めます。
確認の問いと、起きがちなこと
付帯条件の条文を決める前に、自分の運用に当てはめる問い
問い体験は、無料か有料か。回数は何回までか
理由体験の位置づけが決まっていないと、本契約の回数への算入や返金の扱いが決まらないため
問い体験の後に、本契約の勧誘をどういう形で行うか
理由体験の後の勧誘の仕方が、取消しの主張の入口になり得るため
問い紹介や継続の特典は、実際に何を提供しているか
理由内容を書けないなら、約束の実体が定まっていないということになるため
問い特典の条件は、特典を示す場所と同じ場所に書けているか
理由条件を別の場所に離すと、有利誤認の問題になり得るため
問い対面で実施する場合、費用の基準を受講者が見られる形で示せるか
理由基準が見えないと、請求を受けた時点で初めて金額が分かることになるため
問いフィードバックを、実際に何日以内に送れているか
理由書いた目安を守れないと、約束違反を自分で作ることになるため
締結前・見直し時のチェックリスト
- 体験の回数・時間・料金・キャンセルの扱いが書かれているか
- 体験を本契約の回数に含めるか、体験料を本契約に充てるかが、決められているか
- 紹介キャンペーン・継続特典に、内容・対象者・条件・期間・提供の時期・変更の手続が書かれているか
- 特典の条件が、特典を示す場所と同じ場所に表示されているか
- 対面の費用が、費目ごとに、算定の基準・事前の承諾・上限・キャンセル時の扱いまで書かれているか
- 実費と報酬が区別され、金額に税込・税別が明記されているか
- フィードバックの送付の方法・時期の目安・内容が書かれ、運用で守れる内容になっているか
起きがちなこと
- 「提供者が別に定める」と書いたまま、キャンペーンの内容を決めずに運用する。受講者から、約束した特典がもらえないと言われる。
- 紹介者に特典を約束したが、被紹介者が途中で解約したときの扱いが書かれていない。特典の返還をめぐって争いになる。
- 無料の体験で無断キャンセルが続いたのに、再申込みを断る根拠が契約書にも申込みの画面にもない。
- 出張費を「別に指定する基準」で請求し、請求書を見た受講者が、金額を初めて知る。
- 対面の費用で、取り消せる会議室の予約まで、受講者の負担として請求する。
- フィードバックの送付を約束しながら、送付が遅れ、受講者が次回までの課題を知らないまま次回を迎える。
よくあるご質問
無料の体験セッションで無断キャンセルがあった場合、違約金を請求できますか?
請求は難しいと考えるのが安全です。解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金は、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。無料の体験では、事業者に生ずる損害が小さい場合が多いため、違約金を定めるより、「無断でキャンセルされた場合は以後の体験の申込みをお受けしない」と、再申込みの扱いを書いておくのが現実的です。
体験セッションの料金を、本契約の料金に充てる場合、何を書けばよいですか?
体験料の額、本契約に進む期限、充てる金額、充てる条件を書き、広告と申込みの画面にも同じ内容を示します。条件を目立たない場所に小さく示すと、取引条件について実際のものより著しく有利であると一般消費者に誤認される表示として、景品表示法5条2号の問題になり得ます。体験料を充てない場合は、体験の対価に含まれる内容を明記します。
紹介キャンペーンの特典は、景品表示法の規制を受けますか?
景品表示法は、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する役務の取引に付随して提供する経済上の利益で、内閣総理大臣が指定するものを「景品類」とし(2条3項)、その価額の最高額などを制限し、または提供を禁止できると定めています(4条)。紹介や継続の特典がこれにあたるか、どのような制限があるかは、指定の告示と運用基準で確認が必要です。特典の内容と条件を実際より有利に見せる表示も、5条2号の対象になります。
出張費や交通費は、受講者に請求してよいですか?
請求してよい場合はあります。委任事務の処理に必要と認められる費用は、受任者が委任者に償還を請求できます(民法650条1項、656条)。ただし、費用の内容と額が受講者に見えていることが前提です。「提供者が別に指定する基準」とだけ書くのではなく、費目ごとの基準、事前の見積りと承諾、上限、キャンセル時の扱いを書きます。取り消せる費用を超える部分の負担を課すと、消費者契約法9条1項1号の問題になり得ます。
セッション後のフィードバックの送付は、契約で約束する必要がありますか?
法律で一律に義務付けられているわけではなく、契約書で定める事項です。ただし、受任者は、委任者の請求があるときはいつでも事務の処理の状況を報告する義務があるため(民法645条)、実務上は、送付の方法、時期の目安、内容を書いておくのが一般的です。目安を守れない運用は、自ら約束違反を作ることになるため、実際に守れる内容にします。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、セッションの内容・申込みの経緯・支払の方法などによって異なることがあります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 厚生労働省