コーチングやカウンセリングの契約書は、結果を約束しない代わりに、何を約束するのかを書く文書です。時間と回数、セッションの合間の連絡、休んだときの扱い、更新と解約、相談内容の守秘。成果を保証しないと書いても、広告や面談での説明、解約の定め方、守秘の根拠が噛み合っていなければ、書いた意味が薄れます。このガイドは、1対1のセッションを売る人に絞って、準委任としての組み立て、期間と回数、継続コースの更新、体験・特典・実費、肩書の付け方、守秘と記録、解約や返金を求められたときの受け方までを、条文と書き方の例で整理した解説集です。オンライン講座の運営一般や占いの鑑定は、別のガイドで扱います。

これから売り出す方・雛形のままの方

書類を指で示しながら確認している手元

契約書・規約・申込書・同意書の役割分担から決める

1対1のセッションは、単発、回数券、期間コース、月額の継続と、売り方の型で必要な書類が変わります。契約書、規約、申込書、同意書、特商法の表記のうち、どれに何を書くかを先に決めます。

「コーチング」「カウンセリング」といった呼び名に法的な意味はなく、契約の中身と申込みの経緯で扱いが決まります。同じ事項を複数の書類に二重に書かないことも要点です。

成果は保証しないが、何を約束するか決めたい方

開いたノートとノートパソコンが置かれた机

準委任として、時間・回数・方法・記録を書く

「成果は保証しない」と書くだけでは、何を履行すれば約束を果たしたことになるのかが決まりません。時間、回数、実施の方法、資料、フィードバック、記録を数字と手段で書きます。

広告や面談での説明が強すぎれば、契約書で保証しないと書いても、説明が契約の内容として扱われたり、契約が取り消されたりすることがあります。

肩書やサービス名の付け方に迷う方

ノートとノートパソコン、ペンが並ぶ机

「カウンセラー」「コーチ」と名乗るときの線引き

公認心理師やキャリアコンサルタントのように、資格者でない人が名称を使えない定めがあります。サービス名や屋号に資格名を含めるときの表示にも注意が必要です。

契約書には、提供者が医療や心理療法を行うものではないこと、提供者が特定の資格者でないことを確認する条項を置き、誤認を防ぎます。

期間コース・月額の継続コースを作る方

オンライン会議の画面とタブレット、スマートフォンが置かれた机

回数と期間、自動更新、解約の期限を決める

回数と期間の二重管理では、期間満了で残りが失効する扱いと、提供者の都合で実施できなかった回の扱いが衝突しがちです。起算日、失効、延長、休会、振替を分けて書きます。

月額の継続コースでは、更新の拒否を受ける期限、更新後の条件変更、料金改定の通知、申込最終画面の表示まで決めておきます。

相談内容の守秘と記録を整えたい方

オンライン会議の画面を背景に置かれた観葉植物

守秘義務の根拠・例外・存続と、記録の扱い

資格がなくても、契約で定めれば守秘義務を負います。例外として開示できる場面、事例検討や外部委託先への共有の範囲、存続の期間を決めます。

提供者のメモや録音は、本人から開示や削除を求められ得る個人情報になることがあります。保管、開示、削除、保存期間の考え方を条文に落とします。

解約・返金・苦情を言われた方

オンラインで話しながら画面を見ている人

申出を制度ごとに仕分けて受ける

「やめたい」「効果がなかった」と言われたとき、契約上の中途解約、任意の返金、法定の解除、取消し、債務不履行の解除のどれの話なのかを、まず仕分けます。

受付の日時、原文、対象の契約、提供済みの回数を記録し、違約金などの算定の根拠を示せるようにしておくと、その後の対応が崩れません。

このガイドの解説ページ

よくあるご質問

コーチング契約書に「成果は保証しない」と書けば足りますか?

足りません。成果を保証しないことは、結果ではなく履行そのものを約束する契約(準委任)にすることとセットです。時間、回数、実施の方法、資料、フィードバック、記録といった履行の中身を書かなければ、何をすれば約束を果たしたことになるのかが決まりません。さらに、広告や面談での説明が強いと、契約書の外の説明が問題になり、契約の取消しを求められる場面があります。

「カウンセラー」や「コーチ」と名乗るのに資格は要りますか?

公認心理師でない人が「公認心理師」や「心理師」の文字を用いた名称を使うこと、キャリアコンサルタントでない人がその名称を使うことは、法律で制限されています。他方、「コーチ」「カウンセラー」という呼び名そのものを一律に制限する定めは、条文で確認できた範囲ではありません。ただし、医師でなければできない行為は、名乗り方にかかわらずできません。サービス名に資格名を含めるときの表示は、誤認を生まないよう注意が必要です。

期間内に使い切れなかったセッションは、失効させてよいですか?

起算日を決めたうえで、受講者の都合で消化できなかった回の失効と、提供者の都合や不可抗力で実施できなかった回の扱いを分けて書くのが基本です。両者を区別せず、原因を問わず返金も延長もしないと書くと、提供者に責任のある未実施まで失効すると読め、消費者との契約では無効とされるおそれがあります。振替の回数の上限や期限が失効と重なる場面にも注意します。

月額の継続コースで、更新後の条件や料金を通知だけで変えてよいですか?

通知だけで当然に適用できるわけではありません。更新後の条件を請求書やメッセージの通知だけで適用する条項、料金改定を継続利用でみなし同意とする条項は、一方的に受講者の不利益になり得るため、消費者との契約では無効とされるおそれがあります。変更は次の更新期間から適用し、同意しない人が更新前に無理なく解約できる期限を置く形が基本です。

コーチやカウンセラーに守秘義務は法律上あるのですか?

公認心理師やキャリアコンサルタントのように、資格者に法律が守秘義務を課している場合があります。そうでない提供者は、契約で守秘義務を定めておく必要があります。雛形の守秘条項は技術上・営業上の秘密情報を想定していることが多く、相談内容が秘密情報に入るかが不明確になりがちです。相談内容を守る条項と、例外として開示できる場面、存続の期間を決めておきます。

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監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月15日