このページの要点
- コーチングは結果の完成を約束する請負ではなく、事務の処理を任せる準委任として組み立てる(民法632条・643条・656条)。
- 約束するのは結果ではなくやり方。善管注意義務(民法644条)を、準備・進行・フィードバックとして具体化する。
- 報告の義務(民法645条)は、実施日時・回数・テーマの見出し・次回までの行動の記録として書く。
- 受講者の実行は義務にせず協力と位置づけ、実行がない場合の効果は提供者の履行の範囲にとどめる。
結論:成果を保証しない代わりに、履行の中身を数字と手段で約束する
コーチングやカウンセリングの契約書に「成果は保証しない」と書くことは、ほとんどの契約書でされています。しかし、保証しないと書くだけでは、契約書は半分しか書けていません。成果を約束しないのであれば、代わりに何を約束するのかを書かなければ、提供者が何をすれば約束を果たしたことになるのかが決まらないからです。
約束の中身は、結果ではなく履行です。時間、回数、実施の方法、セッションの合間の連絡の範囲、資料、フィードバック、記録。これらを、数字と手段で具体的に書きます。履行を具体的に書くことは、受講者に対して提供者の約束を明らかにするだけでなく、提供者を守ることにもなります。約束した履行をしたことが、契約書と記録で示せるからです。
その前提になるのが、準委任という契約の組み立てです。準委任では、受任者は事務を処理する義務を負いますが、結果を出す義務は負いません。ただし、事務の処理は、善良な管理者の注意をもって行わなければなりません(民法644条)。この注意の中身をセッションの進め方として具体化するのが、契約書の履行の条項です。
- コーチング契約は、結果の完成を約束する請負ではなく、事務の処理を任せる準委任として組み立てる(民法632条、643条、656条)。
- 約束するのは結果ではなく、やり方(準備、進行、フィードバック)。善管注意義務(民法644条)をセッションの進め方として具体化する。
- 報告の義務(民法645条)は、セッションの記録、進捗の確認、宿題へのコメントとして具体的に書く。
- 履行の単位は、時間・回数・方法・資料・フィードバックを、数字と手段で書く。「必要に応じて」「適宜」だけで済ませない。
- 受講者の実行や情報提供は、義務にするか、協力にとどめるかを決める。義務にしても、それを履行しないことの効果を決めておく。
このページは、約束する履行の中身と、準委任の組み立てに絞ります。広告で効果をどう言うかは「効果」の言い方のページ、期間と回数の消化は回数と契約期間のページ、記録の保管と開示は記録・メッセージ・音声のページで扱います。
準委任と請負の違い:結果を約束しない契約の法的な意味
契約の分類は、報酬が何に対して支払われるのかで決まります。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって成立します(民法632条)。たとえば、完成物を納める制作の契約です。報酬は、原則として、仕事の目的物の引渡しと同時に支払うことになります(民法633条)。仕事の完成が報酬の前提です。
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方が承諾することによって成立します(民法643条)。法律行為でない事務の委託には、委任の規定が準用されます(準委任、民法656条)。コーチングやカウンセリングは、対話を通じた支援という事務の処理を任せる契約ですから、準委任に当たると整理するのが一般的です。受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(民法644条)。委任事務を処理する義務であって、望む結果を出す義務ではありません。
報酬についても、準委任は特約がなければ報酬を請求できず(民法648条1項)、報酬を受けるべき場合には事務を履行した後でなければ請求できないのが原則です(同条2項)。期間によって報酬を定めたときは、期間が経過した後に請求することになります(同項ただし書、民法624条2項の準用)。ここで注意したいのは、実際のコーチングの代金は、契約の最初に前払いで受け取ることが多い、という点です。前払いは、民法の原則とは異なる特約です。特約をする以上は、前払いした代金が、どの履行に対応するものなのかを、契約書で示しておく必要があります。
準委任には、もう一つの類型があります。委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合です(民法648条の2、成果完成型)。成果が引渡しを要するときは、その引渡しと同時に報酬を支払うことになります。成果に対して報酬を払う設計は、準委任であっても、結果に近い約束を含みます。コーチングの契約で「成果報酬型」を採るときは、成果の定義、確認の方法、支払の時期を、履行の約束とは別の条項で、明確に書く必要があります。本ページでは、履行割合型(事務を処理したことに対して報酬を支払う型)を前提にします。
準委任(履行割合型)と請負の比較
| 比べる点 | 準委任(履行割合型) | 請負 |
|---|---|---|
| 約束の内容 | 事務を善良な管理者の注意をもって処理すること(民法644条) | 仕事を完成すること(民法632条) |
| 報酬の対象 | 事務の処理(時間・回数・期間) | 仕事の結果 |
| 結果が出なかったとき | 善管注意義務を尽くしていれば、債務不履行にならない | 仕事が完成していなければ、報酬の請求や債務不履行が問題になる |
| 途中で終わったとき | 既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる(民法648条3項) | 可分な部分の給付で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて報酬を請求できる(民法634条) |
| 契約書で書くべきこと | 履行の中身(時間・回数・方法・連絡・記録) | 完成の基準、検収、引渡し |
| コーチングとの相性 | 高い。結果を約束しない設計と整合する | 低い。結果の完成を約束する形になる |
この表のなかで、コーチングの契約書の書き方に直接つながるのは、一番下の行と、「契約書で書くべきこと」の行です。準委任として組み立てることは、題名に「準委任契約」と書くことではありません。契約書の中で、受講者に引き渡す結果ではなく、提供者が行う事務の内容を書き込むことが、準委任の組み立てです。
中途で終わったときの精算についても、準委任のほうが割合による報酬という考え方と整合します(民法648条3項2号、委任が履行の中途で終了したとき)。期間満了前に受講者が解約したときの返金の計算は、履行の単位を数字で書いてあれば、「既にした履行の割合」を計算できます。逆に、履行の単位が書かれていないと、返金の計算の根拠がありません。精算の定め方そのものは回数と契約期間のページで扱いますが、その前提になる履行の単位は、このページで決めます。
善管注意義務で約束するのは結果ではなく、やり方である
善管注意義務は、「善良な管理者の注意」という抽象的な言葉で書かれています。契約書がこの言葉を引用するだけで終わると、何が善良な管理者の注意に当たるのかは、争いになってから裁判所が判断することになります。契約書の役割は、この抽象的な義務を、セッションの進め方として具体化しておくことです。
具体化の切り口は、準備、進行、フィードバックの三つです。
善管注意義務を、やり方として具体化する
| 切り口 | 書く内容の例 | 書かないこと |
|---|---|---|
| 準備 | セッション前に受講者が提出した資料や記入内容を確認する。前回のセッションの記録を見直す。次回のテーマの候補を用意する。 | 「十分な準備を行う」とだけの書き方 |
| 進行 | 決められた時間の範囲内で実施する。受講者の話を最後まで聞き、目標の確認、現状の整理、次の行動の確認の順で進める。 | 「専門的な知見に基づき進行する」といった、何も約束しない書き方 |
| フィードバック | セッション後に、要点と次回までの行動を、○営業日以内に文書またはメッセージで送る。提出された宿題には、○日以内にコメントする。 | 「適宜フィードバックを行う」とだけの書き方 |
| 連絡の範囲 | セッションの合間の連絡を、○回まで、または○日以内の返信で受ける。受付の時間帯を決める。 | 「常時対応する」と書く(実施できないため) |
| 中立性 | 受講者の意思決定を尊重する。提供者の考えを押し付けない。特定の商品や他のサービスの購入を条件にしない。 | 書かない(受講者の意思決定の責任との関係が不明確になる) |
この表の「書かないこと」の列は、よく見かける書き方です。「適宜」「必要に応じて」「専門的な知見に基づき」といった言葉は、約束の中身がなく、提供者がしなくてもよいと読める余地を残します。一方で、「常時対応する」と書けば、実施できない約束をしたことになり、提供者を縛ります。守れる範囲を、数字で区切って書くのが、約束を果たしたことを示すための条件です。
ここで、よくある疑問に触れておきます。履行の内容を細かく書くと、書いていないことをしなくてよいことになるのではないか、という疑問です。たしかに、書いた範囲を超える義務は負わない、という整理はできます。ただし、書いた範囲でも、善管注意義務を尽くすことは求められます。具体的に書くことは、義務を限定するためではなく、義務の中身を明らかにして、双方が同じ理解で進められるようにするためです。範囲を超えることを求められたときには、追加で対応するのか、断るのか、別の契約にするのかを選べます。
準委任で約束することと、約束しないこと
約束すること(履行)
- 決めた時間・回数のセッションを実施すること
- 準備、進行、フィードバックを、書いた手段と期限で行うこと
- セッションの合間の連絡を、決めた範囲で受けること
- セッションの記録を残し、請求があれば経過を報告すること
- 受講者の秘密を守ること
約束しないこと(結果)
- 転職の成功、収入の増加、人間関係の改善といった、特定の結果が出ること
- 受講者の気持ちや行動が必ず変わること
- 受講者が決断した内容が正しいこと
- いつでも即時に連絡が取れること
右の列を契約書に書くだけでは足りません。左の列を、数字と手段で書くことが、右の列の免責に説得力を与えます。
報告として何を残すか:セッション記録、進捗確認、宿題へのコメント
受任者は、委任者の請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過と結果を報告しなければなりません(民法645条)。準委任であるコーチングにも、この規定が準用されます(民法656条)。つまり、提供者は、受講者から求められれば、これまでの処理の状況を報告する義務を負います。
この報告の義務は、契約書に何も書かなくても、法律上存在します。だからこそ、契約書で報告の方法を決めておくと、提供者の負担が軽くなります。報告の義務を、無限定に受けるのではなく、記録という形で、決まったタイミングで、決まった内容を渡すと決めておくのです。
書き方の例セッションの記録と報告に関する条項
- 第○条(記録) 提供者は、各セッションについて、実施日時、実施時間、扱ったテーマ、次回までの行動の確認事項を記録します。
- 提供者は、前項の記録のうち、受講者との間で共有する要点を、各セッションの後○営業日以内に、文書またはメッセージで受講者に送ります。
- 受講者は、契約期間中に、これまでの実施の状況について報告を求めることができます。提供者は、請求を受けたときは、実施した回数、日時、残りの回数を、○営業日以内に報告します。
- 提供者が作成する記録のうち、前項で共有するもの以外の取扱い(保管の期間、開示の請求、削除)は、第○条(記録の取扱い)によります。
第4項は、記録の保管・開示・削除の条項への参照です。記録の取扱いは、個人情報の保護の観点から別に定めます。詳しくは記録・メッセージ・音声のページで扱います。
条項のなかで、読み飛ばされがちなのは、第3項の報告の請求です。実施の状況を報告すると約束しておくと、受講者からの「何回やったのか」「残りは何回か」という問い合わせに、正確に答えられます。残りの回数についての争いは、返金や失効の場面で最も起きやすい争いの一つです。実施した日時と回数を記録していなければ、提供者の側が不利になります。
報告として残す内容は、受講者の話した内容そのものである必要はありません。実施日時、時間、扱ったテーマの見出し、次回までの行動の確認事項といった、履行の事実を示す項目に絞れば、受講者の秘密を不要に書き残さずに済みます。この線引きは、守秘の観点でも重要です。守秘の根拠と、相談内容の扱いは守秘義務の根拠のページで扱います。
履行の単位(時間・回数・方法・資料・フィードバック)を数字と手段で書く
履行の単位を書くとは、契約書の中で「何を何回、どのくらいの時間、どんな方法で、いつまでに」行うかを、空欄を残さずに決めることです。
次の表は、履行の単位の項目と、書き方の考え方です。数字の部分は、契約ごとの取り決めによる空欄として示しています。
履行の単位の項目
| 項目 | 書き方の例 | 決めておく理由 |
|---|---|---|
| セッションの時間 | 1回あたり○分とする。延長する場合は、受講者の希望と提供者の承諾による。 | 終了時刻が曖昧だと、時間超過や不足の主張が起きる。 |
| 回数 | 契約期間中に合計○回実施する。 | 回数が決まらないと、残りの回数の計算ができない。 |
| 実施の方法 | オンライン会議ツール、または○○(対面の場合の場所の種類)で実施する。ツールや場所の変更は、双方の合意による。 | 方法が違えば、準備や費用、記録の仕方が変わる。 |
| 日程の決め方 | 次回の日程は、セッションの終了時に決める。決まらない場合は、提供者が候補日時を○件示し、受講者は○日以内に回答する。 | 日程の調整の責任が誰にあるかを決める。 |
| 資料 | ワークシート、音声資料、チェックリストなどの資料の種類と、提供の方法・時期を書く。 | 提供する資料の範囲が曖昧だと、教材の提供義務の範囲が争われる。 |
| フィードバック | セッション後○営業日以内に要点を送る。宿題の提出があれば、○日以内にコメントする。 | フィードバックが遅れたときの責任の所在を決める。 |
| 連絡の範囲 | メッセージでの連絡は、○回まで、または平日の○時から○時までに受け付ける。返信は、受付から○営業日以内に行う。 | 常時対応の期待と、実際の対応のずれを防ぐ。 |
書き方の例(一般的な例) 履行の単位の書き方
セッションの回数と時間
理由回数が決まっていなければ、何回やれば約束を果たしたことになるのかが決まらず、残りの回数も数えられない。
セッションの合間の連絡
理由随時対応は実施できず、約束を果たせない状態を自ら作る。受付の時間帯と返信の期限を区切ることが、現実に守れる約束になる。
フィードバックと資料
理由適宜という言葉は、いつまでに何をするかを約束しない。送る内容と期限を書けば、履行したことを示せる。
三つめの例のように、フィードバックや資料の提供を条文に書く目的は、提供する範囲を限定することにもあります。契約の範囲外の資料を求められたときに、断る根拠になります。契約に書いていないことをやらなくてよいという意味ではなく、契約の中身と範囲を共有するために書く、という考え方です。
受講者の実行・情報提供を「義務」にするか「協力」にするか
コーチングの効果は、受講者が行動するかどうかに大きく左右されます。そこで、契約書に「受講者は宿題を実行する」「受講者は正確な情報を提供する」と書き、受講者の義務としているものがあります。この書き方を、義務にするか、協力にとどめるかは、設計の判断が必要です。
受講者の義務として書いた場合、受講者が実行しなかったことが債務不履行になります(民法415条)。債務不履行があれば、提供者は、契約の解除(民法541条)や損害賠償を主張することができる、という理屈になります。しかし、受講者が宿題をやらなかったことを理由に、契約を解除し、既に受領した代金を返さない、あるいは残りの代金を請求するという運用は、受講者が消費者であるとき、消費者契約法の観点から問題になります。消費者の利益を一方的に害する条項は、無効とされる場合があるからです(消費者契約法10条)。事業者の債務不履行による損害賠償責任を免除する条項の制限も関わります(同法8条)。
そこで、設計の考え方として、次のように分けるのが現実的です。第一に、受講者の実行そのものを義務とはせず、「協力」と位置づけます。第二に、受講者の協力が得られない場合に、提供者の履行にどう影響するかを書きます。たとえば、宿題が提出されない場合、その回のフィードバックは省略され、セッションは予定どおり実施される、といった書き方です。第三に、情報の提供については、正確な情報を提供するよう努める、虚偽の情報を提供しないという範囲にとどめます。
受講者の実行と情報提供の位置づけ
協力・情報提供として書けること
- 受講者が、セッションの前に必要な資料を提出するよう努める
- 受講者が、事実と異なる情報を意図的に提供しない
- 受講者が、日程の調整に応じる
- 宿題が提出されなかった場合、その回のフィードバックは省略される(ただしセッションは実施する)
書き方に注意が必要なこと
- 宿題を実行しなかったことを理由に、代金を返さず契約を解除すること
- 目標が達成されなかったことを、受講者の努力不足の責任とすること
- 受講者の意思決定の内容に、提供者が責任を負わないとだけ書くこと(人生の決断に関わるセッションで扱う限界がある)
受講者の実行を契約の義務にすると、その不履行の効果を決める必要が生まれます。効果を重くすると、消費者契約法の問題が生じます。
書き方の例受講者の協力に関する条項
- 第○条(受講者の協力) 受講者は、本サービスの効果的な実施のため、セッションに必要な資料の提出、日程の調整その他の協力に努めるものとします。
- 受講者は、本サービスの提供に必要な情報について、事実に反する内容を意図的に提供しません。
- 受講者の資料の提出が遅れた場合、提供者は、当該回のフィードバックの内容を省略することができます。この場合でも、当該回のセッションは予定どおり実施し、第○条に定める回数に算入します。
第3項は、受講者の協力が得られなかった場合の効果を、フィードバックの省略という限られた範囲にとどめる書き方です。回数への算入の扱いは、回数の数え方の条項と整合させます。回数の数え方は回数と契約期間のページで扱います。
報酬との関係:履行割合型の精算と、成果完成型の違い
準委任で構成した契約では、報酬が、事務の処理に対して支払われます。契約が途中で終わったとき、提供者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項)。これを、契約書の言葉に直すと、実施した回数、または経過した期間に応じて精算する、という定めになります。
ここで、前払いで全額を受け取っている場合の精算の考え方を整理します。受領した代金は、実施済みの履行に対応する部分と、未履行の部分に分けられます。未履行の部分は、契約が途中で終了したときに、返還の対象になります。返還額の計算方法は、実施した回数と、一回あたりの対価の定め方に依存します。一回あたりの対価を契約書に書いていなければ、返還額を計算する根拠がありません。履行の単位を書くことは、精算の根拠を書くことでもあります。
一方、成果完成型(民法648条の2)では、成果が引き渡された時点で報酬が発生します。コーチングの契約で成果報酬を採る場合は、成果の定義が必要です。定義が曖昧だと、成果が出たのかどうかで争いになります。成果への評価を理由に支払を止める問題は、別のガイドで扱います。本サイトでは、1対1のセッションの契約は、履行割合型で組み立てることを前提にしています。
なお、委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができるのが原則です(民法651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に解除したときなどは、損害賠償の責任を負う場合があります(同条2項)。コーチングの契約で、受講者が自由に中途解約できるのか、制限があるのかは、民法の原則を出発点に、契約書の定めで調整します。この調整の仕方は、期間と回数のページで扱います。
起きがちなこと
履行の約束で起きがちなこと
- 「成果を保証しない」と大きく書いたが、時間・回数・連絡の範囲が空欄または「適宜」で、何をすれば履行したことになるのかが決まっていない。
- セッションの合間の連絡を「随時」受けると書いたため、返信が遅れたことが、そのまま債務不履行の主張になる。
- フィードバックの期限を書かなかったため、送付が遅れたときに、いつ履行すべきだったのかが決まらない。
- セッションの記録を残さなかったため、実施した回数や日時を、受講者の主張と照らして確認できない。
- 受講者の宿題の実行を義務として書き、実行しなかったことを理由に返金を断ったところ、条項の有効性が問われた。
- 契約書の題名は準委任契約だが、成果の達成を約束する表現(「必ず」「確実に」)が条文に混ざっていて、請負に近い約束をしたと読まれる。
- 前払いで受け取った代金の一回あたりの対価が書かれておらず、中途で終わったときの返還額の計算に根拠がない。
よくあるご質問
コーチングの契約は、準委任と請負のどちらになりますか?
対話を通じた支援という事務の処理を任せる契約ですから、準委任に当たると整理するのが一般的です。請負は仕事の完成と結果に対して報酬を支払う契約ですから、結果の達成を約束する形になると請負に近づきます。準委任として組み立てるには、結果ではなく履行(時間、回数、方法、連絡の範囲、記録)を契約書に書くことが前提になります。
「成果は保証しない」と書けば、何も約束しなくてよいのですか?
そうはなりません。成果を保証しないことは、結果を約束しないというだけで、履行を約束しないという意味ではありません。受任者は、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負います(民法644条)。履行の中身が書かれていないと、何をすれば約束を果たしたことになるのかが決まらず、かえって提供者に不利になります。
セッションの合間の連絡は、どこまで約束すべきですか?
実施できる範囲だけを、数字で区切って書きます。受付の時間帯、返信までの期限、回数の上限などです。「随時対応する」と書くと、実施できない約束をしたことになります。連絡の範囲を限定する場合も、契約書とサイトの案内に同じ内容を書くことが必要です。
セッションの記録は、受講者に見せる義務がありますか?
受任者は、委任者の請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告する義務を負います(民法645条)。報告の中身は、実施日時、回数、扱ったテーマの見出し、次回までの行動といった、履行の事実を示す項目に絞ると、受講者の秘密を不要に書き残さずに済みます。個人情報の開示請求との関係は、記録・メッセージ・音声のページで扱います。
受講者が宿題をやらないとき、契約を解除できますか?
宿題の実行を義務としても、それを理由に解除し、返金も断るという運用は、消費者との契約では問題になりやすくなります。受講者の実行は「協力」と位置づけ、実行しなかった場合に提供者の履行がどう変わるか(たとえば、その回のフィードバックを省略する)を書く設計が現実的です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、セッションの内容・申込みの経緯・支払の方法などによって異なることがあります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 厚生労働省